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Mail to the Chief (TV) 大統領へのEメール

アメリカ映画 (2000)

ビル・スウィッツァー(Bill Switzer)主演のコメディ・タッチのTV映画。大統領役はランディ・クエイド(Randy Quaid)。13才、中学の2年生が、大統領選の最終局面で「選挙参謀」として活躍するというあり得ない話だが、そつなくまとめて、それなりに面白く仕立てている。この役は、ビル・スウィッツァー以外には考えにくい。女の子にもてない落ちこぼれの雰囲気と、大統領と互角に渡り合える元気の良さの両方を普通に出せる子役などいないと思うので、はまり役だと言える。

ビル演じるケニーが、授業の一環で大統領候補同士のTV討論会を見て、候補者の発言内容に失望するところから映画は始まる。映画の作成当時、まだ最新のネット利用法だったチャットを使い、偶然匿名でアクセスした大統領と意見交換することになったケニー。討論会を見た不満をそのまま大統領本人に、それと知らずにぶつける。その意見の新鮮さ、庶民性を聴衆の反応から実感した大統領は、チャットの相手が中学2年生と知って愕然とするものの、そのセンスに惹かれて、ホワイトハウスにこっそり呼び、話を聞いて、「使える」との確信を得る。そして、誰にも本当にされないまま、ケニーと大統領の二人三脚は続く。その正体が、相手候補によって暴かれそうになるまでは… ナンセンス映画だが、脚本はよく書けていて、結構ハラハラさせられる。見終わった感じもいい。

ビル・スウィッツァーは、13才の割に子供っぽくみえる。ハンサムとは言えないが、愛嬌があってなかなか捨て難い子役だ。主演作が、あと『天使といた夏/デビッド・ボウイ』くらいしかないのが残念だ。


あらすじ

もうすぐ大統領選が行われる。そこでケニーが通う中学でも、社会科の先生が「君達はとても幸運だ、大統領選の年に政治を学べて」と言い、今夜のテレビ討論会を見て、クラス討論会を行うと話す。しかし、ケニーの目は、大好きだが高根の花のヘザーしか見ていない。その夜、ケニーの部屋に来た大親友のマイク。実は、テレビ討論会を見に来たのではなく、パソコンの得意なケニーに頼み事があったのだ。ケニーの父は政治無関心人間。見たい番組の変更があって、テレビ討論会が始まるとプンプン。一方、討論会を見たケニー達もガッカリ。「説得力ないな。見ただけ損した」「つまらなかった。先生が、面白いなんて言うから」とケニー。「どっちも、質問に答えてなかった」とマイク。「試験であんな風に答えてみろよ。落第だ」。
  
  

翌日学校で、虐めっ子のグレッグに取り上げられたジャケットを、取り返そうと試みるケニー。「その… 心配してるんだ… そのジャケット、いつ返してくれるのかなって」。「俺が、このジャケット 返すように見えるか?」と、相手にされない。挙句に、「いいか、ありがたいと思え、お前のランチも 借りてやる。それで、お前のヘマを忘れてやってもいい」。一方の、憧れのヘザー。ランチライムにケニーのテーブルに寄ってくる。「ちょっと話していい、ケヴィン?」。「あの… ケニー」。「ごめんなさい、ケニー」。「ううん、ケヴィンがダメな名前ってワケじゃないよ」「僕の両親だって、きっと ケヴィンって名前 考えたと思う」。何と卑屈な言葉。「で、何だい?」。「二人きりで」。ケニーはもちろん付いていった。
  
  

ケニーは、マイクに、ヘザーの目的はパソコンを教えて欲しかったんだと打ち明ける。そして、「あのヘザーが、僕のウチに来るんだよ。一人で。僕の部屋に」と言う。せつない感じ。そして、ヘザーが部屋に来る。「これが立ち上がったら、始めよう」。「助けてくれてありがとう」。「いいんだ。ちょうど、スケジュールも空いてたし」。ケニーは学校のサイトを出し、先生のページも見せる。「先生って、試験の問題なんかも、ここに入れてるの?」と訊くヘザー。「うん、僕たちには見れないけど」。「その場所に、試験問題とか… 解答なんかも?」。「うん、だけど先生のアカウントがないと」。「あなたみたいな達人なら、入れるんでしょ?」。ここにヘザーの狙いがあったのだ。しかし、「それ 不正行為だ」「すごいトラブルに 巻き込まれるかも」。それを聞くと、ハザーは、もう用はないとばかりに帰宅した。
  
  

一方の大統領。最近は支持率が下がり、相手候補に水をあけられている。それというのも、スピーチライターが非庶民的で無感動、かつ、内容のない、言葉だけのスピーチしか書けないからで、選挙参謀もそのことに気付いていない。その頃、大統領の執務室にもパソコンが入り、ネットとの使い方について説明を受ける。そして、チャットのサイトについても。その夜、ケニーは、ヘザーのために先生の個人ページに侵入していた。その時、突然母が入ってきたので、慌てて政治のチャット・サイトに切り替える。「こんな遅くに 何してるの?」。「宿題だよ… 社会科の」。そして、試しに見つけた“平均的市民”という名の相手と、意見交換を始める。「大統領のディベートをどう思うか」という問いかけを見て、「もし彼が、学校であんな答え方をしたら、落第だ」と打ち込む。「どうして?」。「どの質問にも ちゃんと答えていない。いっぱい話したけど中味がなかった」。「いいや、ちゃんと答えた」。「数回は答えたけど、どうやるかは言わなかった。収支の均衡だって? でも、どうやって?」「算数と似てる。答えだけじゃだめ。導く過程を示さないと」などと書き込む。それを読んだ大統領、翌日の米国教育協会のスピーチで、定番どおりの内容にブーイングが起きた時、とっさに昨夜のチャットの内容を幾つか盛り込んで挽回し、直後の調査で支持率も4%上昇した。
  
  

これに気を良くした大統領。さっそく、その夜もチャット。マイクと一緒にパソコンをいじっていたケニーに、“平均的市民”から伝言が入る。「君の言葉には考えさせられた。今日の討議で役に立った。ありがとう」。さっそくケニーが書く。「変な人じゃないよね?」。相手から、「どんな仕事をしてる?」と訊かれ、「宿題」。それを見た大統領は、「大学院生か、なるほど」とひとりごち、「どこの学校?」と訊く。「デヴィッドソン中学校」。「教師か」と思い、「何年生を教えてる?」。逆にマイクは、「なんで先生だと思うんだ?」と不思議がる。ケニーの返事は「先生じゃない。僕は2年の生徒」。驚いて椅子から落ちる大統領。その夜行われた、対立候補とのテレビ討論会で、理詰めで攻められ劣勢に立たされた大統領、筋書きを離れ、チャットで教えてもらったTVのクイズ番組を例に上げ、具体的でわかりやすく防衛費のあり方を論じ、討論会を制する。
  
  
  

間奏曲。学校で、「ヘザー、やあ」と呼びとめるケニー。昨夜の今日なので、「ケニー、私 今 忙しいの」と剣もほろろ。しかし、ケニーが「昨夜言ってたこと、パソコンで出来たんだ」と紙を差し出すと、表情が急変、「これ試験問題?」「あなたって最高ね、ケニー」。そして、ほっぺたにキス。ボーッとニヤつくケニー。
  
  

大統領は、チャットの効果が絶大なので、選挙参謀のやり手の女性を執務室に呼んで事情を打ち明けることにした。「選挙向けの言い回しを、どこから持ってきたか、知りたがってたろ?」「教えるが、その前に 座った方がいい」。話を聞いてコケる参謀。彼女は、「世界最強の国家の指導者が、国内のチャットで会った中学2年生から政治的な助言を受けていた」ことに愕然とし、大統領の「会いたい。この子は金鉱だ」との要望にも「ご冗談ですわね」。「彼は、きっと神童なんだ、政治のモーツアルトさ」。結局、大統領に押し切られ、身元調査をすることに。日常生活を徹底的に調査されるケニー。ボーリング場でも、横でCIAがじっと見ている
  
  

選挙参謀のOKが出て、ケニーをホワイトハウスに内密に呼ぶため、ケニーの社会科の先生を表彰することにして、クラスごと見学ツアーに招き、途中でケニーを “拉致”する。執務室に連れて来られたケニー、大統領が入ってきたので仰天する。「ホワイトハウスへようこそ、ケニー」と手を差し出されてもポカンとしたまま。しかし、大統領がお互いのチャット名を言ったので、「僕が、変人だと思ってた人?」「わあ! これってまるで…」と思わず叫び、感激して手を握る。ケニーは「社会科はBマイナスです」と謙遜するが、「成績は関係ないんだ。チャットをしてて気付いたんだ。君の豊富なアイディアや、人々が親しを持てる表現に」。さらに、人払いをしてから、さらなる助言を求める。緊張して言葉に詰まるケニー。リラックスさせようと、邸内のボーリング室に連れて行き、口が軽くなったケニーから革新的なアイディアを引き出す。その間、クラスの見学ツアーは長々と延長され全員くたくた。
  
  

家に帰ったケニーは、両親に「実地見学で、信じられないことが起きたんだ」と興奮して話すが、2人ともこれっぽちも信じない。「今の聞いてた? 息子が大統領とボーリングしたって。助言までしたそうよ」。「偉かったな。スコアは?」。ケニーは「2人とも 信じてない」「もういいよ!」と怒って出て行く。ホワイトハウスでは、昨日のケニーの提案で、懸案だった法案への反対がすんなり受け入れられたので、厳しい参謀も、「あの子は 政治の碩学ね」と高評価。一方、クラスでは、授業後、先生に呼ばれ、昨日の見学ツアーの感想文に対し、執務室やボーリング室のことを書いたものだから、「二度とない好機だったのに、まるで その気がない」とF評価(落第)をもらってしまう。
  
  

ケニーには、さっそくホワイトハウスから呼び出しがあり、家を出る。出がけに、「ママ、大統領の手伝いに行くから」と言ってしまったので、「本当は、どこへ行くの?」。「ホワイトハウス」。「本当のことを言わない限り、家から出さないわよ」。結局、友達の家に行くと嘘を言って、許可が下りる(変な話だ)。執務室では、大統領を囲んで作戦会議。参謀からは、「ケニー、これからは、もっとそばにいて欲しいわね。これが、直通の電話番号。それにポケベル。いつでも呼び出せるように」。翌日、授業に出ていると、早速、校長室に呼び出され、「キャサリン伯母さんから電話があり、今すぐ来て欲しいそうだ。何でも 家族の緊急事態だとか」。
  
  

翌日は、ケニーが校長室を訪ね、「伯父が、肝臓移植をすることに」と言って早退する。この時は、おまけがあった。学校の外で虐めっ子のグレッグに捕まったのだ。しかし、幸い、すぐ横にはケニーを迎えに来たCIAの黒リムジン。さっそく “怖い” おじさんがグレッグを囲む。「ウィットコスキー氏が、ジャケットを返して欲しいそうです」と言われ、恐る恐る返すグレッグ。役得だ。
  
  

ケニーがボーリングをしている脇で、選挙参謀は支持率が前回より9%アップしたと満足げに語る。満足してみんなを帰し、ケニーと2人だけになった大統領。「ケニー、君の助けは実に貴重だった。ありがとう」。「実は、政治やってて、結構楽しかったりして」とケニー。そして、「試してみない?」とボーリングを勧める。持ち方から投げ方までコーチしているところに、令嬢が。父と映画を見る約束があったのだ。2人を紹介する大統領。令嬢は邪魔しちゃ悪いと出て行く。「忘れてた?」とケニー。「ああ」。「『先に始めてて』。そう言うんだ。親が 子供を追い払う時。でも、バレてる」と話すケニー。何でも話せる関係だ。もう遅くなったと別れる際、もう一度、「ありがとう、ケニー」と言う大統領。「もう言ったじゃない」。「ボーリングのレッスンと、もろもろに」。「いいんだよ、閣下」とジョーク。そして、がっちりと手を握り合う。
  
  
  

ここで、情勢が一気に変化する。対立候補が、大統領の急激な “庶民化” の原因を必死で追究した結果、ケニーの一歩手前まで辿り着いていたのだ。テレビ討論会で、大統領の顧問の中に「その出自を国民から隠そうとしている」人物がいると指摘する。幸い情報は、ケニー自身ではなく、その父だったが、返答につまった大統領の支持率は4%も低下。帰りの車の中で、選挙参謀は、選挙まで1週間しかないので、安全策をとり、13才の顧問は切ろうと申し出る。
  
  

不幸は一気に押し寄せた。PTAの会合で、ケニーが何度も早退していたことを聞いた母。帰宅すると、「ケニー・ウィットコスキー!!」と大声で怒鳴る(自分の子をフルネームで呼ぶのは、カンカンに怒っている時)。「早退願いは誰が書いたの? あんた? マイク?」。「CIA」とケニー。「ラリってるのか?!」と父。「そんなことしないよ! 前に言ったろ、ホワイトハウスで大統領と話してたんだ」。そして、「証明できる!」と言って直通番号にかけるが、「おかけになった番号は、現在使われておりません」と自動音声が流れる。呆然と電話器を見るケニー。「さあ、どうなってるか説明するんだ」。「もう 話したよ」。「そうか、よく聞け… 追って沙汰するまで、外出は禁止。テレビもパソコンも禁止。友達も呼ぶな。正直に話すまで、学校と お前の部屋だけを往復してろ」と宣告されてしまう。学校でスクールバスを降りると、待ち受けていたヘザーには、試験問題も渡せない。問題と引き換えに約束していたダンスも、「こう言えて 嬉しいわ。結論から言うと。私が、あんたと一緒に行くことなんて、あり得ないの」。こんな逆境の中にあって、一人肩を持ってくれたのが、大統領の令嬢。父とボーリングをしながら、ケニーのことを「いろいろ助けてもらったんでしょ?」「なぜ電話して、そう言わないの?」とサポートしてくれる。
  
  
  

学校の生徒会長の選挙演説。立候補者は1人しかいない。現在の生徒会長で、自分の取り巻きに有利な施策しか公約しない金持ちの嫌味な子だ。その言葉を聞き流しながら、ケニーとマイクが話している。「じゃあ君が、大統領にEメールを送ってたのか?」。「そうだよ」。「すごい」。「信じるの?」。「もちろん」。マイクが、立候補者のつまらない演説に、「僕らには何も変えられない」と嘆いたのを聞き、ケニーは、「きっと できるさ」と敢然と立ち上がる。そして、立候補者が如何に利己的な目的しか持っていないか、実現不可能な公約しか並べていないかを指摘し、より現実的な内容を提言する。その話を聞いて、皆がケニーを候補者に推薦し、ケニーもそれを受ける。大統領と話しているうちに、消極的傍観派から積極的活動派になっていたのだ。ケニーが公約する。「約束するよ、皆の意見を聞くって。来年はいなくなる3年生からも、投票権のない1年生からも。それが一番大事なことじゃないかな」。偶然取材に来たTVキャスターが、「選挙の年に相応しい名言です」とコメントする。それを車内で大統領と一緒に見ていた顧問が「あの子のガッツを褒めてやらないと」。もう一人も「ああ、生徒会長に立候補するなんて。あんなに問題を抱えてるのに」。大統領が「問題って何だ?」と尋ねる。選挙参謀が、「外出禁止、社会科落第、嘘付き呼ばわり」。顧問が、「ダンスパーティーも振られた」と加える。すべて自分のせいだと考え込む大統領。
  
  

大統領は、顧問達が下車すると、そのまま車を発進させ、ケニーの家へと向かう(ボルチモアまで70キロくらい)。何事かと一斉に後を追う報道陣。家の前に着き、ノックすると父が出てくる。ケニーを呼ぶように頼むが、ケニーは「話したくない」と面会を拒絶。大統領は、「一人ぼっちだな」と苦笑し、報道陣に、この家に住むケニーが、指摘された顧問だったと打ち明ける。さらに、それは40才の父ではなく13才の息子の方だと。そして、「合衆国の大統領ともあろう者が、13才の少年から助言を受けていると認めるが恥ずかしかった」とも述べる。また、「投票できない人々を含め、全員の意見を聞くべきだ」という言葉を引用し、憲法にある「人民の、人民による、人民のための政治」という原則も忘れていたと反省する。そうした大統領を、家の中のTV中継で見ていたケニーは、家の外に出てきて、「あなたに1票入れるます。もし選挙権があれば」と声をかける。「あまり迷惑をかけてなければいいが」と大統領。「社会科は落第だけど」とケニー。「電話しよう。課外単位に十分値する」。
  
  

ラストシーンは、ケニーの中学で開催されたダンスパーティ。大統領のはからいで、令嬢がケニーの相手になることが許可された。大統領専用車に乗って現れる2人。先に降りたケニーに生徒達が喝采。ケニーが手を取って令嬢を降ろす。「ありがとう。生徒会長さん」。演奏を始める生徒のグラスバンド。「君のパパの就任式でも演奏できるよ」と言い、令嬢の笑いを誘う。「行こうか」。「ええ」。2人はきっとこれからも友達だ。
  

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